こんにちは、Яeiです。
今回は早稲田大学大学院(数学)を修了した私が、高校数学で突如として登場するラジアンについて解説していきたいと思います。
「え?アラジン?A Whole New World ~ ♪」なんて一瞬思うかもしれませんが名前が微妙に違います。
今まで角度を表すのに「60°」みたいに「°」で表してきたのに、なぜか途中から「単位はこれからラジアン(rad)な!」とジャイアンもビックリな突然の変更が入るのです。
恐らく多くの方は「結局ラジアンくんは何やったんや」と今でも思っているのではないでしょうか。
今回はそんな「ラジアンくん」について誰でも分かるように解説していきたいと思います。
目次
角度の表し方(度数法)
多くの人は「角度」ときいて「°」を思い浮かべると思います。
例えば以下のような「60°」の角度の三角形などです。
このような角度の表現方法は「度数法」と呼ばれており、一周を360°で表します。
小学生時代から教わってきた角度の表し方がこの方法となりますので、恐らく皆さんよくご存じなのではないでしょうか。
ちなみに、一周を360°としている由来は、どうやら昔の暦では一年を360日としていたようで、その名残だそうです。
角度の表し方(弧度法)
それでは次に「ラジアン」についてです。
こちらも角度の表し方(単位)となっておりまして、次のように定義されております。
1 ラジアン:円の半径と等しい弧に対応する中心角の大きさ(単位はrad)
これだけだと少し分かり辛いと思いますので、簡単のために以降は単位円(半径が1の円)について考えていきたいと思います。
こちらの定義は、単位円の弧の長さがそのまま角度になりますということを表しております。
「どうしてこんな定義の仕方をしているのか」という疑問に対する回答は後述致します。
ここでは二つの角度の表現方法「度数法」と「弧度法」の関係性について少し見てみましょう。
半径$ r $の円の円周の長さは「$ 2\pi r $」となりますので、単位円の円周は「$2\pi$」となります(円周率を$\pi$としております)。
つまり、弧度法で表すと角度は「$2\pi$(rad)」となります。
これは円を一周した角度となりますので、度数法で表すと角度は「360°」となります。
つまり、
$$360° = 2 \pi [rad]$$
となるのです(難しいようでしたら、この計算は今は理解できなくても構いません)。
このように、度数法と弧度法とでは角度の表し方は異なりますが、お互いに変換が可能なのです。
まぁ、どちらも角度を表しておりますので当たり前といえば当たり前ですね。
弧度法で表すメリット
では最後に「ラジアンくん。君はいったい何のために出てきたのか」について解説していきます。
そもそも「今まで度数法で習ってきたのに、なぜ突然弧度法が現われたのか」が疑問だと思います。
これは高校数学において、この後に習う「三角関数」「微分積分」がこの概念を導入するとスッキリと計算できるからとなります。
(他にもメリットはあるのですが、大きな理由はこれです)
数学で「三角関数」「微分積分」はかなり重要な分野となります。
例えば、三角関数は「音」を解析する場合に用いますし、微分積分は取り込んだ音を解析したりできます。
(あくまでも一例になります。この他にも用途は多岐に渡ります)
こうした重要な分野を学ぶにあたって度数法は使い勝手が悪すぎるのです。
つまり、弧度法は計算を楽にするために導入された概念といっても過言では無いと思います。
ちなみに、どのくらい使い勝手が悪いのか実際に見てみましょう。ただし、実際の計算は難易度が高いので、ここでは結果だけ掲載致します。
<$sin\theta$の微分>
度数法:
$$(sin\theta)’ = \frac{\pi}{180} cos\theta $$
弧度法:
$$(sin\theta)’ = cos\theta$$
<$cos\theta$の微分>
度数法:
$$(cos\theta)’ = -\frac{\pi}{180} sin\theta $$
弧度法:
$$(cos\theta)’ = -sin\theta$$
<極限>
度数法:
$$\lim_{\theta \to 0} \frac{sin\theta}{\theta} = \frac{\pi}{180} $$
弧度法:
$$\lim_{\theta \to 0} \frac{sin\theta}{\theta} = 1 $$
三角関数や微分積分を習うと、こういった計算が山のように出てきます。
そうすると、度数法ではかなり計算が面倒になってきますし、少なくとも手での計算はかなり辛いものがあります。
時間が勝負の受験において、これでは途中計算しているだけでタイムアップになってしまいます。
そのため、今後の数学を学ぶ上でそうならないためにも、先手をうって「ラジアン」という概念を導入していたのです。
「ラジアンくん、縁の下の力持ちでした!!!」
ちなみにですが、高校生がラジアンを学ぶ段階ではこうした度数法との違いが説明されることは少ないように感じます。
理由は複数あると思いますが、大きな理由としては三角関数も微分積分もこの段階では習っていないので「度数法だとどのくらい大変か」をうまく伝えられないのです。
そのため、高校数学においてラジアンくんは「ぽっと出の謎の概念」となってしまうのです。
(確かに私自身、仮に「この後の分野で計算を楽にするためにラジアンを導入するぞー!」と言われていたとしてもピンとこなかったと思います)
恐らく今日も、高校生にとっての謎の存在として縁の下で優しく学生を支えてくれていることでしょう。
当記事は以上となります。
今まで謎の概念であったラジアンについて、何となくイメージがわいたのではないでしょうか。
数学は一つ一つをしっかりと読み解いていくと案外難しくないのですが、なにぶん新しい知識となりますので定着する前に次へ次へと進んでいきます。
そのため、どの道受験期まで忘れてしまうことが多いので、こうしたイメージをしっかりと掴んでおくことが数学を学習する上で大切なのではないかと思います。
長々とお疲れさまでした!