「最近、何か面白い本ないかな?」
そう思って書店をうろついたり、過去に読んだ本からAIにおすすめを聞いてみたり。最終的に手に取ったのが、道尾秀介さんのミステリー小説『向日葵の咲かない夏』でした。
正直、事前情報もジャンルも一切なし。まっさらな状態で読み始めたのですが…結論から言うと、この本は私には「合いませんでした」。
でも、それは決して悪い意味ではありません。むしろ、この本が持つ独特な「気持ち悪さ」と、それを読み解く過程が、このレビューを書きたくなるほど強烈な読書体験だったんです。
目次
衝撃のあらすじ、そして…ミステリー好きの私が感じた「違和感」
この本のあらすじは、読後の私をさらに唸らせました。
夏休みを迎える終業式の日、先生に頼まれ、欠席した級友・S君の家を訪れた「僕」。すると、そこには首を吊って死んでいるS君の姿が。しかし、彼の死体は忽然と消え、一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れる。「僕は殺されたんだ」と訴えるS君の無念を晴らすため、「僕」は妹のミカと共に事件を追いはじめる。
これだけ聞くと、「面白そう!」「早く続きが読みたい!」ってなりますよね。ミステリー小説が好きな私にとって、この設定はまさに王道中の王道。しかし、読み進めていくうちに、ある一点にどうしようもなく引きずり込まれていきました。
妹のミカ、その不自然なまでに大人びた言動です。
ミカは3歳という設定なのに、とても世界を知っていて、まるで大人と話しているかのような、大人びた話し方をするんです。ちょうど4歳の息子を育てている私にとって、この描写はあまりに現実離れしていて、「気持ち悪い…」と感じるほどの違和感でした。
その違和感は「伏線」?いえ、私には「答え」でした
この「気持ち悪さ」を感じた瞬間から、私の中では物語の「答え」が薄っすらと見えてきてしまいました。
- ミステリー好きだから?
- 洞察力があるから?
いえ、違います。つい最近まで3歳の息子を育児していた私だからこそ、この「違和感」が正体を見抜くための強力なヒントになってしまったんです。
もし子育て経験がなかったら、この違和感に気づかず、純粋にミステリーとして楽しめたかもしれません。物語の細かな人物描写は本当に秀逸で、子どもならではの気まずさやハラハラ感は、リアリティに満ちていました。そのリアルさの中に、S君という非現実的な存在が放り込まれることで、物語はさらに複雑さを増していくのです。
「これは、読んでいるのではなく、なぞっているのだ」
違和感の正体が分かってしまった私は、後半はまるで「2週目を読んでいる」ような感覚でした。もちろん犯人や結末は分かりませんが、物語の構造や、それぞれの登場人物の役割は最初から見えてしまっていたからです。
物語が進むにつれて増えていく登場人物、そして町に渦巻くドロドロした人間関係。一見複雑に見える設定も、ある一つの解釈を軸に読み進めていくと、すべてが綺麗に一本の線で繋がっていきます。
『向日葵の咲かない夏』は、こんな人におすすめ!
このレビューを読んで「なんだ、じゃあ面白くないのか」と思った方もいるかもしれません。
でも、そうじゃないんです。
この本は、読む人の背景や経験によって、まったく違う読書体験になる、そんな奥深さを持っています。私のように子育て経験がある人や、洞察力に自信がある人なら、この本に仕掛けられた「違和感」を読み解くミステリーとして楽しめるでしょう。
逆に、事前情報を入れずにまっさらな気持ちで読める人にとっては、予測不可能な衝撃の結末が待っています。
読み終えた後、きっと「この物語は一体どういうことなんだろう?」と誰かと語り合いたくなるはずです。
あなたも、この「気持ち悪いミステリー」を体験してみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。もしこの記事を読んで興味を持った方がいれば、ぜひこの本を手に取ってみてください。 あなたの感想も、ぜひコメントで教えてくださいね!